「空間に住む数学」 加藤文元 / ‘Mathematics reside in space’ by Fumiharu Kato
June 29, 2024
19世紀半ば以降の現代数学は、ベルンハルト・リーマンによる多様体概念が抽象的空間概念や集合概念へと変遷したことを受けて、それ自身が自体的存在原理をもつ空間的対象を扱う「建築学的数学」となっている。このパラダイムの数学では、空間的建造物の構成こそが各々の理論の出発点であり、これをさまざまなパースペクティブから読み解くことが定理を証明することに他ならない。一方、21世紀の数学は(少なくとも私には)このパラダイムを超えて、完成された巨大建築から出発しない、より柔軟で動的でインタラクティブな学問の形を目指そうとしているように見える。数学はなぜ、そしてどのようにして建築学になったのか?そしてこれを発展的に超克することで、数学はどのような学問に変身しようとしているのか考えてみたい(加藤文元)。








加藤文元〈かとうふみはる〉
1968 年宮城県生まれ。東京工業大学名誉教授、株式会社SCIENTA・NOVA 代表取締役。97 年、京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻博士後期課程修了。九州大学大学院助手、京都大学大学院准教授などを経て、東京工業大学教授。2022 年 退職。著書『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT 理論の衝撃』(KADOKAWA) で第2 回八重洲本大賞を受賞。ほかに『数学の世界史』(KADOKAWA)、『ガロア理論12 講概念と直観でとらえる現代数学入門』(KADOKAWA) など多数。