Hamacho Liberal Arts no. 20 / Fumiharu Kato

「空間に住む数学」 加藤文元 / ‘Mathematics reside in space’ by Fumiharu Kato

June 29, 2024

19世紀半ば以降の現代数学は、ベルンハルト・リーマンによる多様体概念が抽象的空間概念や集合概念へと変遷したことを受けて、それ自身が自体的存在原理をもつ空間的対象を扱う「建築学的数学」となっている。このパラダイムの数学では、空間的建造物の構成こそが各々の理論の出発点であり、これをさまざまなパースペクティブから読み解くことが定理を証明することに他ならない。一方、21世紀の数学は(少なくとも私には)このパラダイムを超えて、完成された巨大建築から出発しない、より柔軟で動的でインタラクティブな学問の形を目指そうとしているように見える。数学はなぜ、そしてどのようにして建築学になったのか?そしてこれを発展的に超克することで、数学はどのような学問に変身しようとしているのか考えてみたい(加藤文元)。