Hamacho Liberal Arts no.11 / Atsushi Horibe

「街は書店でつくられる」堀部篤史(誠光社店主)/ Bookstore makes City by Atsushi Horibe (Seikosha)

September 17 (Sat), 2022

11回目のHamacho Liberal Artsは京都の書店、誠光社の堀部篤史さんによるトーク。
本屋は街を作る。書棚の本を介しての客と店のやりとりが行われる書店はいつ行っても刺激的だ。誠光社はそんな本屋のひとつで書棚から溢れるメッセージに圧倒される。

「やりたくないことはできない人間なので」という前置きからはじまった堀部さんの話は書店を切り盛りするための目の覚めるような試行錯誤のアクションの数々。書籍流通の取次やオンラインシステムなど巨大資本が司る誰にお金を支払っているかわからない状態から抜け出し、自分の大切にするコミュニティに利益をもたらすことを心がける。そして客と店が対等である場をつくり、顔の見えないビジネスに争う。商うことは自分にとって大切な関係性を維持しながら実感を伴って生きること。そのプロセスには無数の選択が含まれている。それは日々の消費でも同じことで、考え抜いた選択は自分のコミュニティを作り、生きる糧になる。書店のあり方を通して、ひとりの人間の数々の選択が世界の価値を作っていることを再確認した。

Hamacho Liberal Arts 11, the talk event at o+h architectural office, has invited Atsushi Horibe, the owner of bookstore in Kyoto, Seikosha. Bookshelves of the Seikosha is an media: it calls out strong messages via books and let customer respond to it.
Running a small business is continuous feedback to the capitalist society which, otherwise, does not let us choose or bring us to the easy choice without thinking. Horibe san avoids being part of numb consumption and constantly face the choice whether he pays the cost to the people or community that he values. It makes us realise that every decision what, who and where to consume makes the world we live.

書店は都市で生まれる文化を本を通じていち早く発信し、それを鑑賞する現場である。2015年に京都の神宮丸太町にオープンした書店・誠光社は街の本屋が消えていく引き金となった従来のしくみを刷新しながら、かつて本屋が担ってきた場としての役割を今の社会と街にあった形で果たしている。今回は店主・堀部篤史さんをお招きして本の販売を通じてコミュニティを作り、都市と地方という構造ではなく「顔の見える経済圏」としてのローカルという概念を発展させてきた実践の数々をご紹介いただく。大手取次主体の流通システムに振り回されない店作りとは、オンライン環境や情報発信ツールに支配されない発信の仕方とは、地方に出向いてイベントを行う理由とそれがもたらすものとは、真にインディペンデントである意味とは。「本屋は街の光」であるという誠光社の取り組みをきっかけに文化を育む場という観点から書店のあり方を考えてみたい。 

堀部篤史

京都市左京区出身。1996年、恵文社一乗寺店にアルバイトスタッフとして勤め始め、2002年より店長を務める。2015年同店を退社、独立し、同年11月京都市上京区河原町丸太町の路地裏にて「誠光社」をオープン。著書に『本を開いてあの頃へ』、『本屋の窓からのぞいた京都』、『街を変える小さな店』などがある他、『ケトル』、『アンドプレミアム』、『本の雑誌』を始めとする雑誌連載、執筆活動も行う。

Photo: Koh Akazawa


Hamacho Liberal Artsとは

建築事務所o+hが拠点とする日本橋浜町LAB1階にて不定期で行っている勉強会。様々なトピックに対して、創造的な方法で向き合っている世界中のアーティスト、デザイナー、建築家、編集者、キュレーターなどの作り手とつながり、彼らのプロジェクトとそれに至るまでのプロセスを共有する。普段、専門分野で分断されがちな視野を広げることで、社会と創造的に関わる姿勢について様々な立場の人々が何度も学び直すことができる場所を目指している。

Hamacho Liberal Arts is a study group taken place at Hamacho LAB. 1F, Tokyo, where the architectural office o+h is based. By having the opportunity to talk with people who create the values, such as artist, designer, architects, editor, curator etc., and share the process of their project, it aim to broaden the view that is otherwise being limited by their specialities and become an opportunity to unlearn and relearn for people in all levels of social practice.