
奈良文化財研究所、景観研究室長の惠谷浩子さんの文化的景観調査に同行している。全国の地方自治体の依頼を受けて地理的条件、地域の歴史、そこに住む人々の営みといった条件をリサーチしたうえで、その地域に唯一無二の価値を考察し、報告するという任務だ。現地に住む人々への聞き取り調査や現地の地形を確認するために車で辿る疾走調査など、何度も現地に足を運び、その土地に住む人々の営みの実態に迫る。
「文化的景観」とはその⼟地ならではの⾃然環境をもとに、⼈々が独⾃の生活・⽣業を営んできた結果としてできた⾵景そのものを⽂化財として捉える概念である。1992年に世界遺産のなかのひとつに導入された。日本では2004年、文化財保護法の一部改訂により、文化財のひとつに加えられた。
風景を見ると自然と文化は二つの異なる価値ではなく、人が自然と関わり合うことで暮らしてきた場そのものだということがわかる。どの地域特有の文化はその地形や気候、植生が人々の暮らしにもたらしたものだ。資本主義経済や開発など、社会の変化とともに変わる地域の財産を形あるもの、ないものを含めて考え直すことは、自然と人間が共に生きていく未来を多角的に考えることにつながるのではないだろうか。そのことは調査地域のみに当てはまるものではない。地球上のあらゆる地域、共同体にとって、この調査の方法や考察を知ることは自分自身が住む地域のことを深く考えるための見方を提供してくれる。そのことを調査に寄り添うほどに実感する。
人々の生活の営みによって生まれるかけがえのないもの。惠谷浩子さんが「愛おしさ」と呼ぶもの。それは「目に見える」ものと「目に見えない」ものとが折り重なることで、生まれてくる価値なのではないかと思う。それは時には相入れないものだったり、解けない課題だったりする。そういった地域で繰り広げられるこもごもをそこに住む人、住んでいない人も含めて広く伝えるために最適な方法とはなんだろう。地域の営みがすでに持ち備えている美しさ、イマジネーション、創意工夫、物語とは。映像、ドローイング、演劇、文学など、様々な方法を念頭に作家の個性や技術が地域の特性とどのように共鳴しうるか、そしてどのようにしたらその地域にしかない価値を遠くまで届けてくれるのか考えている。
・ 熊本県天草市﨑津
2025年初夏
エッセイ「カオリンの行方」
メモランダム「﨑津雑記ー稜線と水平線」









2025年冬






・ 鳥取県智頭町
2025年晩夏






2025年晩秋
メモランダム「智頭雑記ー呼吸する山」






